海外在住の子どもは、現地語と日本語の両方が耳に入る環境で育っています。なので、我が子に日本語を教える時、二つの言語の紐付け作業が必要になります。あまり体系的に説明されることはないですが、これを意識するかしないかで、子どもの言語習得に大きな影響を与えます。3人の子育て経験から、この紐付けをいつ、どのようにするのかについて、コツをまとめました。
紐付けとは?
日本語だけの環境で育つ子どもは、まわりのみんなが同じ言葉を使うので、紐付けをする必要はないのですが、複数の言語が混在する環境で育つ場合、複数の言語で、おなじことを意味する表現をリンクしておく必要があります。例えば、「みず」と”Water”は同じものをさすと、子どもの頭の中で紐付けされなければいけません。そして、誰にどの言葉を使うのかも、紐付ける必要があります。
赤ちゃんの頃から、日本語話者の親が、日本語でだけで話しかけていれば、自然と子どもの頭の中は、現地語と日本語の両方が混在する状態になります。そして、おしゃべりをするようになるころ、この混在状態の整理(紐付け)をしていくと両方の言語が習得しやすくなります。
紐付けはいつからするの?
子どもがおしゃべりするようになったころから、日本語話者の親が積極的に、紐付けを意識することが大切と感じています。個人差はありますが、「ママ、みて!」のような、二語文を使えるようになるころには、言語の使い分けができるように教えていくのがよいと思います。(2歳前後ぐらい?)
でも、使い分けを教えるのがメインであって、日本語で言わせることが目的ではありません。そして、言葉は、コミュニケーションの手段であるのが一番なので、どちらの言語であるかより、子どもが伝えることのできる表現をまず、そのまま受け止めることが大切です。
なぜなら、子どもたちは、言葉を話し始めのころは、どちらかの言語の「言いやすい表現」だけを好んで使うからです。それは、母音から始まる単語の言いやすさだったり、短い単語の音の覚えやすさだったりします。そして、その月齢の子どもにとっては意思を「伝える」ことが一番大切なのです。
紐付けのやり方
3歳ぐらいまでの小さい子には、日本語とか英語とかスペイン語とか、そういった言語の違いを、そのまま伝えても、ピンときません。でも、その言語を使うのは誰なのかというのは、よく理解しています。我が家の場合、『日本語=ママ、現地語=パパ、先生』という構図をよく使います。
具体的には、子どもが何かを指さしながら、”Look!(見て!)”と言ったら、まずその方向を見て、それから、「見てほしいとき、ママは、『見て!』って言うんだよ。パパは”Look!”と言うけどね」という風に説明します。すると、子どもは、「わたしは、どっちを使おう???」と子どもなりに考えます。(これは、意外だったのですが、両方言えちゃう自分はどうしよう?!と思うようです。)
「わたしも『みて!』っていうよー!」と言う時もあれば、「ぼくは”Look!”っていうんだよ!」と反応するときもあります。
そのときに、「ママには、『みて!」と言ってほしいな。パパには”Look!”と言おうね」と使い分けを教えます。はっきりとそう伝えることで、子どもは言語の使い分けの線引きができます。
紐付けしないとどうなるの?
日本語話者の親が積極的に、日本語と現地語の表現の紐付けをしないと、集団生活が始まるとすぐに現地語に発語が偏ります。つまり、子どもは、現地語でしか話そうとしなくなります。そして、日本語を伸ばすのが難しくなります。
子どもは、誰にどの言語が伝わっているのかは、だいたい気付いているので、日本語話者の親が現地語も理解していると気付けば、園などの集団生活でメインに使っている現地語で話しかけていいじゃないかと思ってしまいます。そして、その方が、子どもにとっては自然で楽な場合の方が多いです。
だから、小さいうちから子どもの言語システムの設計に積極的に関わる必要があります。現地生活の中で、自然に任せていれば、日本語は伸びるどころか消えていきます。
日本語話者の親とは、日本語で話すという基本ルールを守るのはもちろんのこと、子どもが発語しやすいように、たゆまなく日本語での表現をインプットしなくてはいけません。そのための、紐付けなのです。子どもが現地語では言えるけど、日本語では言い方を知らない表現は、逐一、「ママは、それは○○っていうのよ~。マリア先生は、△△っていうけどね」というように、教えてあげなければ、子どもは言えるようにはなりません。
そして、日本語での表現さえ教えてもらえれば、子どもはすぐに、日本語で話そうとします。日本語を話さず現地語で通そうとするときは、単に言い方を知らないだけなのです。(もしくは、忘れてしまって思い出せない。これもよくあります!)
まとめ
モノリンガルで育った親からすると、バイリンガル脳がどう育つのかは実際に体験したことではありません。でも、子どもの脳内を想像することはできます。
子どもの言語脳が、デフォルト状態では、『コミュニケーションで効率的な言語(=現地語)を常に使用する』となっていると仮定すると、その初期設定を『現地語が通じても日本語話者には日本語を使用する』に変更しないといけません。その際、日本語表現のインプットのルートを確保し、そのインプットした表現を現地語にリンクしなければ、日本語でのアウトプットができる複言語システムとして正常に機能しません。(ITに詳しくはないので、ちょっと適当な比喩説明ですけど。笑)
我が家の子どもたちは、集団生活が始まってからも、日本語がやや優勢です。それは、私が日本語でのインプットと紐付けを日々、意識していたからというのと、パパが家庭でやや無口というのが混じった結果と思われます。笑
なにかの参考になれば嬉しいです。
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